教会だより

2024年08月811号

子供たちを私のところに来させなさい

【マリノE.デハクトJr.】

私は、中学から大学まで、聖アウグスチノ修道会が経営するカトリック系の学校で教育を受けました。宗教の授業では、聖アウグスティヌスがおっしゃった言葉が、よく出てきました。聖アウグスティヌスと言えば、放蕩息子のたとえ話です。彼は回心する前、放蕩息子のように生きていたからです。私は、聖アウグスチノ修道会には、入らなかったのですが、神学校の黙想会の時に、この同じたとえ話が、テーマとなりました。神学生たちは、自分が、兄と弟のどちらに似ているか、と質問され、その選んだ理由も説明しなければならないのでした。当時、私は日本に来たばかりで、その黙想会の指導者のシスターは、厳しい方と聞いていたので、ものすごく緊張しました。私の番になった時、何を言ったらよいのか分からなくて、そのシスターに「まだ、迷っています。」と答えました。その時、神学生たちの中に、大きな笑い声が起こりました。シスターが、「あなたは、本当の放蕩息子です。」とおっしゃいました。

皆さん、ご存じの通り聖アウグスチノ修道会には、入らなかったのですが、この会のおかげで、自分の司祭召命に気づかされたのだと思います。そして、この会の小教区で、私が入会した修道会を知るようになりました。ご存じようにその修道会は、エスコラピオス修道会と呼ばれています。本会の創立者は、聖ヨセフ・カラサンスという人物です。今月25日は彼の祭日です。ヨセフ・カラサンスは、1557年9月11日に、スペインのアラゴン王国に生まれました。子供の頃から神様について興味があり、よく祈っている子でした。大きくなるにしたがって、カラサンスは、神父になりたいと思うようになりました。そのため、家から離れてアルカラ大学校で神学の勉強を始めました。家庭と環境の問題のためカラサンスが司祭になりたいという希望があっても父親からなかなか許してもらえませんでした。けれどもカラサンスが神様からの呼びかけを信じていろいろな試練を乗り越えて、1583年11月17日、叙階されて、司祭になりました。彼はしばらく生まれた所で司祭職を果たしました。1597年ローマに行って教育を受けられない貧しい子供たちのために無償の学校を開きました。その時から聖ヨセフ・カラサンスは全生涯を子供たちのために捧げました。彼は貧しく弱い者、つまり子供達に教育を受けさせるため、自分の生涯を捧げました。彼は、「もし、祈りとキリストの教えを子供達に早く勉強させれば、彼らはよい国民になるだけではなく、永遠の命にも与ることができるでしょう。」と語っています。 聖ヨセフ・カラサンスの祭日のミサで朗読されている福音の箇所はマルコ10章13節~16節です。人々がイエス様のところに子供達を連れて来たという場面です。この人々は、両親だと考えてもいいでしょう。この人たちは、子供が病気からいやされることを願ってはいませんでした。子供達にイエス様の話を聞かせることも、願ってはいなかったでしょう。イエス様の語る言葉は、大人でもなかなか理解できないからです。彼らは、神の業がイエス様の内に働いていると分かっていたから、自分の子供も祝福してほしかったのです。この人たちは、子供のために一番大切なことをしました。なぜなら、イエス様の祝福は、体のためよりも魂に恵みが与えられるからです。そして、イエス様ご自身も子供達にご自分のところへ来てほしいのです。しかし、子供たちは弱い者ですから、指導者がいなければ、そうすることはできないのです。ですから、私達は、子供達をイエス様のもとへ連れて行く責任があります。それは、簡単な役割ではありません。しかし、キリスト者として自分の持っている信仰を他の人に伝えるべきなのです。最初に、家庭の中から始めたほうがいいでしょう。よく言われているように、最初の教室は家庭なのです。ですから、ある意味、私達は一人一人が先生なのです。子供たちは大人の動作をよく見ていると皆分かっていると思います。特に家庭の中で子供たちが両親の模範から学んでいるのです。私たちは子供たちにキリスト者らしいの生き方を見せるのが大事だと改めて思い起こさせられます。このような模範によって私たちが頂いた信仰を周りの人たち、特に子供たちと分かち合うことができます。この与えられた使命を果たすことができるように聖ヨセフ・カラサンスの模範に倣い、彼の取り次ぎも神様に願いましょう。

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